9 月 02

私たちは知らないうちに、いくつもの「壁」を作っています。
私たちは、来る日も来る日も、毎瞬毎瞬、無数の壁を作りながら生きています。
習性となってしまっているため、それは無意識で自動的な活動です。
今この瞬間にも、あなたは次の「壁」を作る場所を探そうとしています。

それは、このようなものです。

あなたは電車に乗っています。
途中で、赤ちゃんを抱っこしたお母さんが乗ってきました。
あなたはその赤ちゃんを見て「かわいいな」と思います。
心が和む瞬間です。

しかし、赤ちゃんは突然泣き始めました。
それも、もの凄い勢いでです。
激しく泣き叫ぶ赤ちゃんの泣き声ほど、人の神経を逆なでするものはありません。
あなたは「うるさいな」と感じます。

周りへの迷惑など、お構いなしです。
赤ちゃんは、一向に泣きやむ気配がありません。
あなたは、だんだんとイライラしてきます。
「全くうるさい。お母さんも、もう少し上手く、あやし付ければいいのに…」

あなたは目的地の駅に到着します。
電車からホームに降り立ったあなたは、あのうるさい泣き声から解放されて、

「やれやれ」

と一息つきます。

あなたは「うるさい赤ちゃんの泣き声」から解放されたと思っています。
しかしこの間、あなたは既に壁を作ってしまいました。
赤ちゃんとそのお母さん、それとあなたとの間にです。

あるいは、こんなケースもあります。

あなたが道を歩いていると、向こうから、見た目がいかにも怖そうな男性が歩いてきます。

「うわ〜、いかつい感じの人だな。目つきも悪いぞ。
通りすがりに因縁でも付けられたら、たまったもんじゃない」

あなたは怖々とその人とすれ違います。

…何事もありませんでした。

「あ〜、良かった!」

あなたは無事で済んだことを喜びます。
しかし本当は無事ではありません。
なぜなら、すれ違った人との間に「壁」を作ってしまっているからです。

「壁」は、あなたが嫌悪感を抱いた「人」や「物」に対して作られるとは限りません。
こんな場合もあります。

あなたが美容院を訪れました。行きつけの美容院です。
ところがそこに、初めて見る顔のスタイリストさんがいます。
どうやら前回カットに訪れたあと、新しく入って来られたようです。

しかし、このことに少し問題点がありました。
その美容師さんは、あなたにとって、もの凄く「タイプ」な人物だったのです。
まさしく「理想のルックス」と言っていいでしょう。

「うわ〜、参ったな。メチャクチャタイプじゃん!緊張して上手く喋れそうにないよ…」

あなたは、その美容師さんと自分のと間に、即座に「壁」を作り出してしまいました。

こうやって好ましいものにも、その逆のものにも、私たちは絶えず「壁」を作り出しています。

壁は絶えず作られ続けていますが、勝手に消えてしまう場合もあります。
先のケースでは、理想のタイプの美容師さんが、話してみたら結構気さくで、意外に馬が合ってしまった場合などです。
こんな時、最初の印象で作り上げてしまった壁は、気がついたらなくなっています。
しかし、その美容師さんが無口で、なかなかうち解けられないような場合、依然として壁は存在し続けます。

壁が消えるか、そのまま存在し続けるかは、現実がどのように展開していくかにかかっています。
対象との関係が、あなたにとって好意的に展開していけば、壁は自ずと消えます。
そうでない場合、壁は消えません。
しかしいずれの場合も、「壁を作る」というあなたのプログラムがキャンセルされたわけではないので、あなたはまた別の対象に対して、壁を作り続けるのです。
しかも、壁を作るのは「あなた」ですが、その壁が消えるかどうかは、現実の展開いかんにかかっています。
自ら作り出したにも関わらず、作った途端、壁はあなたのコントロールから離れてしまうのです。

なぜ、私たちは「壁を作ろう」とするのでしょうか?

それは「自分を守るため」です。

私たちは常に、精神的・物質的な危険から身を守ろうとしています。
それは人間として安全に生存していくためです。
人間として生存していくためには、生命の安全があらゆる角度から保証されている必要があります。
つまり、危険は判別して遠ざける必要があるのです。

「これは危険」「これは安全」

こうやって毎度区別しながら、危険を感じたものには壁を作り続けます。

そしてこれは、自分自身に関してだけ作動しているシステムではありません。
愛する人や家族が出来れば、その安全まで視野に入れて壁を作っていきます。
あなたが組織に属していればその組織、あなたが住んでいる地域、あなたの国…
といったように、様々な単位での「壁」を作る必要に迫られます。
そして、実際にせっせと作り続けているわけです。

ところが、あなたが「自分と対象との間に作っている」と思っているこの壁は、実は外部には存在しません。
どこをどう探しても、そんな物は存在していないのです。

そうです。実際に壁を作っている場所は「あなたの内部」です。
それ以外のどこを探しても、実際に壁はありません。

自分自身を危険から遠ざけるために、いわば本能的に内部に作られる「壁」。
これに、いったいどのような問題点があるのでしょうか?

〈つづく〉

written by 108

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